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巨大数論

ただひたすら、大きな数を考えました。

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表紙

2版作成中

「はじめに」より

私たちが日常生活で使う大きな数は、たとえば世界の人口が70億人を突破したとか、国家予算が200兆円であるといったように、100兆=10の14乗程度までです。その上の単位である京(けい)を知っていても、さらにその上の垓(がい)といった単位を使うことはめったにありません。

科学の世界では、たとえば1モルに含まれる要素粒子の数を表すアボガドロ数という数は、約6023垓になります。物理的に意味のある非常に大きな定数としては、エディントン数という数があります。これは、全宇宙にこの数の陽子があるとしたもので、2の256の136倍で、10の79乗のオーダーになります。大きな数として有名な「無量大数」という数の単位は10の68乗で、それよりもエディントン数の方が大きいことになります。「天文学的数字」という表現がありますが、天文学の世界でも、エディントン数よりも大きい数を扱うことはまずありません。

ところが、それよりもさらに大きな数が、仏教の経典には書かれているとのことです。大方広仏華厳経の巻第四十五、阿僧祇品第三十という経典に書かれている不可説不可説転という数の大きさを計算すると、10の37218383881977644441306597687849648128乗というとてつもない大きな数になります 1 。「不可説不可説転メートル」がどれくらい長い距離なのか、あるいは「不可説不可説転秒」がどれくらい長い時間なのか、想像をすることすら不可能です。

一方、数学の世界では、不可説不可説転とは比べ物にならないほど大きなグラハム数という数が定義されています。これは、ギネスブックにも載ったそうです。この数の大きさは、たとえば「10の10乗の10乗の…と100回繰り返して…」といったような表現では、とても表現しきれない気の遠くなる程ほど大きな数です。

このような巨大数について、2ちゃんねる掲示板というインターネットの掲示板でなされた議論を下敷きに書いたものが本書です。2ちゃんねる掲示板では、話題のジャンルごとに掲示板群「板」が設定され、板の中で話題ごとに立てられる「スレッド」において、会話がなされます。数学の話題を扱う「数学板」の中の「巨大数探索スレッド」シリーズの中で、巨大数探索が繰り広げられてきました。

この巨大数探索スレッドに「ふぃっしゅっしゅ」という名前で書き込んでいるのが、本書の著者です。そこでは、グラハム数よりもはるかに大きいふぃっしゅ数という数を考案して書き込みました(2002年6月29日)。ふぃっしゅ数は、単純に「大きい数を定義する」という目的で作られたものです。ただそれだけの、何の実用性もない数ですが、このふぃっしゅ数をきっかけとして、巨大数をめぐる白熱した議論が戦わされました。「ふぃっしゅっしゅ」とはふざけた名前ですが、当初スレッドに参加したときには、一時的なお遊び程度に思っていたためです。まさか、ここまでまじめに数学的議論が戦わされるとは思っていませんでした。

本書は、2007年9月24日に「まだ書きかけ」バージョンを公開し、何度か細かい修正をしましたが、ずっと書きかけのまま放置していました。2013年9月11日に、裏サンデーに小林銅蟲さんによる「寿司 虚空編」という漫画が連載開始され 2 、第1話ではグラハム数が、第2話ではふぃっしゅ数が出てきました。小林さんは、シュールな漫画「ねぎ姉さん」 3 の作者として有名な方ですが、「巨大数探索スレッド」では、ふぃっしゅ数が登場した時からずっと巨大数の探求をされて来た方です。最初のスレッドでは「695」スレッド2と3では「旧695」スレッド4以降では「もやしっ子」という名前で書き込みをされています。また、巨大数探索スレッドでの議論をまとめた巨大数研究室のサイト 4 を管理されています。著者は、小林さん主催の巨大数勉強会に参加したこともあります。

「寿司 虚空編」の連載に触発され、この機会にある程度形にまとめようと思い、2013年10月に大幅に書き加えて初版として公開することとしました。

本書では、まずは巨大数サイトの定番、ロバート・ムナフォ氏の Large Numbers 5 のページを参考にしながら、無量大数や不可説不可説転等の巨大数の話から入ります。そして、クヌースの矢印表記が原始帰納であることを示し、アッカーマン関数やモーザー数、グラハム数などを越えるコンウェイのチェーン表記が2重帰納であることを示してから、3重帰納以上の多重帰納関数について説明します。そこでは、巨大数スレッドで生まれた多変数アッカーマン関数やふぃっしゅ数などについて説明します。そして、順序数の概念を導入することによって、関数の増加速度を評価出来るようになり、さらに大きな巨大数の話へと発展します。

改めて海外のサイトを見ると、Googology Wiki 6 といったサイトが立ち上がり、巨大数スレッドで話題になったバード氏もさらに大きな巨大数を作成していることが分かりましたので、そこで得た最新の巨大数情報を初版で書き加えました。2013年12月には、Googology Wiki の日本語版「巨大数研究Wiki」 7 が立ち上がり、日本語での巨大数情報整理が始められています。

著者は数字で遊ぶのは好きですが数学の専門家ではありません。大学は農学部出身で、集合論や情報理論などの専門的な教育を受けていません。最初に「ふぃっしゅ数」を考えた時に持っていた知識は、アッカーマン関数とグラハム数に関する解説をネットで読んだ程度のものです。本書に記されている数学的な内容は、巨大数探索スレッドやネット上の解説ページで得た知識を元に書いていますが、素人が書いた文章なので、不正確な内容が含まれている可能性があります。

本書は、ホームページ 8 から最新バージョンのPDFファイルをダウンロードできます。また、改訂履歴もホームページに記録します。 本書に対するご意見ご感想、数学的な誤り、計算間違いや誤植等の指摘は、著者のツイッターアカウント @kyodaisuu 9 へのメンション、あるいは巨大数研究 Wiki の著者のメッセージウォール 10 宛にお願いします。


  1. 無量大数の彼方へ http://www.sf.airnet.ne.jp/~ts/language/largenumber.html

  2. 裏サンデー「寿司 虚空編」 http://urasunday.com/u-2_09/index.html

  3. ねぎ姉さん http://negineesan.com/

  4. 巨大数研究室 http://www.geocities.co.jp/Technopolis/9946/

  5. Large Numbers (Robert Munafo) http://www.mrob.com/pub/math/largenum.html

  6. Googology Wiki http://googology.wikia.com/

  7. 巨大数研究 Wiki http://ja.googology.wikia.com/

  8. 巨大数論(本書)のホームページ http://gyafun.jp/ln/

  9. 著者のツイッターアカウント https://twitter.com/kyodaisuu

  10. 巨大数探求 Wiki @kyodaisuu メッセージウォール http://ja.googology.wikia.com/wiki/Message_Wall:Kyodaisuu

全参考サイト一覧

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改訂履歴



ふぃっしゅっしゅ (2013) 『巨大数論』 http://gyafun.jp/ln/